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「その首の赤いのってもしかしてキスマーク?やっぱり彼氏いたんだ?」 「違うよ。これはただ虫に刺されただけだよ。多分寝てる間に刺されたっぽ い。」 「えー。絶対違うよ。だっていっつも飲み会とかも参加しないし、学校帰り も真っ直ぐ帰るじゃん?おかしいよ。彼氏がいるんだったら全部納得いく し!」 彼女はそう言いながらカプチーノを一口飲んだ。 私に彼氏がいようがいまいが関係ないじゃないか、あなたの話をいつも聞いているだけで私の話なんて聞いても何の意味もないのに。 「いやいや。ないから。私なんかと付き合う男なんていないよ。」 「そんなことないよ。だって碧、痩せてるし、可愛いし。」 可愛いという言葉を聞いて気持ち悪くなる。 彼女の意味する可愛いというのは容姿的に可愛いといよりは、自分よりも格が下で弱い物に対する可愛いという感情から生まれていることがわかる。 彼女の中で本来の可愛いという意味が機能するのは、雑誌に載っているようなメイクもばっちりで髪型も流れるような柔らかいもの。 服装も誰かから好かれる、守られるものが一番似合うと思って選ばれるような服。 そんな人を彼女は可愛いと言ったり綺麗だと思うこともわかっている。 だから、彼女が私に対して可愛いと言う時はたいてい、見下しているときだ。その笑顔のうちに潜むわずかな軽蔑を私は見逃さない。
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