第1章

2/10
前へ
/10ページ
次へ
「ねえ、知ってる?ウーロン茶と緑茶って同じ葉っぱなんだよ」 「うそ、マジ?」  彼女に向かって驚きの表情を見せる。実はウーロン茶も緑茶も、そして紅茶もまた同じ葉っぱだということは知っている。なぜなら家が御茶屋だからだ。 「そうなのよ。発酵の仕方によって味が変わるんだって」彼女は得意そうに答える。「不思議よねぇ、同じものでも色まで変わるなんて面白いね」 「そうだな」  彼女の返事に合わせて相槌を打ちながら団扇を仰ぐ。こうやって知らないふりをするのは俺の日課だ。そうすれば彼女との会話を長く共有できるからだ。  そう、俺は彼女のことが好きなのだ。  彼女は真面目で、優しくて、人の話をきちんと聞く。リスのように目が大きく歯が出ているのが特徴的で愛らしい。彼女といると、ペットといるようで落ち着くのだ。 「なんだ、君は知ってるのかと思った。以外に知らないこともあるのね」 「御茶屋だからってお茶のことはわからないよ。うちの母ちゃんだって知らないと思うぜ」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加