第1章

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 彼女にいいように答えてしまう。この癖は彼女を好きになって変えてしまった癖だ。今までなら相槌も打たず、返事も返さなかったのだが、彼女に興味を持つようになって以来、ピエロのように大げさなリアクションをするようになってしまった。 「俺はお茶よりも珈琲の方が好きだけどな。お前のとこの珈琲はブラックでも飲めるよ」  もちろんブラックなど好き好んで飲めない。彼女に好かれたいがために、彼女のバイト先の喫茶店に通っているのだ。ブラックといいつつ、きちんと砂糖だけは溶かしている。 「私はまだ飲めないけどね、苦いしさ。何が美味しいの?」 「落ち着くんだ、あの雰囲気で飲む珈琲は。うるさくもないし静かでもない、あのちょうどいい浮力の中で飲む珈琲が好きなんだ」  もちろん我慢して飲んでいる。まだ嫌いな抹茶を飲んでいる方がましだというくらいなのに、彼女のウエイトレス姿を見ていれば、味など気にならない。 「ふーん、そうなんだ」  彼女の瞳に陰りを見つける。今の反応は気に入らなかったのだろうか。 「まあ、いいや。またいつでも来てよ」 「ああ、もちろん。バケツで用意して貰っても構わないぞ」  放課後、彼女は何もいわずに家に帰る。もちろん今日はバイトの日だっていうことも知っている。
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