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「飲めないって嘘ついてたけど、本当は好きなんだ。だからあなたがあの珈琲を好きっていってくれて嬉しかった。あなたにもっと美味しい珈琲をいれてあげたかったの」
彼女は大きく吐息をついた。その手は大きく握られている。
「だからさ、あなたが好きっていった珈琲を実際に見てきたの。向こうでは季節が逆転するからさ、珈琲の出荷を見るためには今しかない、って思ったの」
「うそ、マジ?」
「おおマジよ」彼女は目を背けずにいう。「だからね、驚かそうと思って、黙っていったの。あなたを驚かせたくて色々な情報を仕入れにいってきたのよ」
「そうだったのか……」
俺は申し訳なくなり目の前にある袋のように萎んでいった。
「すまん、俺が珈琲が好きだっていうのは嘘だ。一番好きなのは新茶だ」
俺はきちんと彼女に伝えた。
「ブラックの珈琲は嫌いだ、砂糖なしじゃ飲めないし、抹茶の方がまだ飲める。俺があの店に通っていたのはお前がいたからだ」
俺ははっきりと彼女の顔を見ていった。これ以上、隠し事はしたくない。
「だからお前が海外に行くって聞いてから、あの店には行ってない。いっつも我慢して飲んでたんだ」
「うそ、マジで?」
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