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「……そう言うワケなんだけど、一緒にどう?」
司は更に山を登り、ラルフィとレミューリアの生活圏であるダムまでやって来た。
フランソワは散歩のルート決めや蝶達とのコミュニケーションに勤しんでいるため、司が名誉ある使命を受けてここまでやって来たと言う経緯である。
「わあ、楽しそう!」
「……」
素直に喜んでいるラルフィと、冷めた目線で司を見るレミューリアは非常に対称的であった。
「まあ、無理にとは言わないよ」
「アンタ、その話本当なの?」
「え?」
乗り気になってもらえないのは覚悟していたが、まさか話そのものを疑われるとは思ってもいなかった司はたじろいだ。そこに容赦の無い追い討ちが飛んで来る。
「フランだけならともかく、蝶も一緒って言うのが信じられないわ。お父さんがそんなこと許可する筈ないじゃない」
確かに、ヴァイスも実のところ同じ部分を気にしていた。ここに司が一人で来ることになったのもそのためである。
人間の世界と似ているとは言え、全く同じではないこの世界の環境で蝶が安全と言う保証はない。逆に、この世界の環境に蝶が影響を与えない可能性も小さくない。『バタフライエフェクト』と言う言葉の示唆するように、どれほど小さな出来事でも未来に与える影響は未知数なのだ。
しかし、フランソワはゼロの許可はもらっていると言い張った。無論それを伝えてもレミューリアはびくともしなかったが。
「又聞きの又聞きなんて、信用ならないわ」
「仰る通りです……」
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