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「・・・・・・」
衣典司(いのりつかさ)は先程から目を少し開いては、眩さで閉じてしまうと言うことを繰り返していた。
しかし、それは司の本能が時間を稼ぎたがっているからである。
(ここはどこなんだろう……?)
最後の記憶は上下左右があべこべになった山の斜面。
高校受験の重圧から少しでも逃れたい一心で、験担ぎでもしようと初詣のついでに山登りをした。友人と初日の出を見ようと、疲れ果てた心身にムチを打った自分に待っていたのは、雪解け水でぬかるんだ階段。
踏み外した拍子に策が無い斜面に向けて投げ出された。もし目が覚めるなら、その斜面か病院のベッドであろうと考えられる。
しかし、司はどういうわけか椅子に座っていた。
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