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今のところ身体に痛みはない。しかし、どうやらここは山でも病院でもなさそうである。
「こ、ここ……は……?」
生還の安堵から、この状態への不安に心情が徐々にシフトし始めた。
あれほど開こうとしていた目蓋は急激に重くなり、心臓が痛いほど高鳴り全身に沸騰した血液を送り込む。こめかみが心拍に合わせてズキズキと疼き呼吸は荒くなる。
ようやく口にした声も、辛うじて言葉になる程度。しかし、これが状況を大きく一変させることになる。
「!」
確かに今、音が聞こえた。しかもそれは足音。自分以外の誰かがこの空間にいると言う確証。
「だ、誰かいるの……!?」
こうなっては目を開かないわけにはいかない。ようやく開かれた司の視界に飛び込んできたのは、見た事もない生き物だった。
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