白と黒の案内人

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「さっきの技俺にも教えてよ。次俺にボール貸して!」 「えーずるい!順番だよ、次は僕だよ!」 「最初は逆回りだっただろ」 気が付けばまたヤイヤイと、微笑ましい兄弟喧嘩が始まった。ルシアとジーク、どちらが兄なのだろうか。それとも双子なのか。聞くのは簡単だが、少し物思いに耽ってみるのも楽しい気がする。 「お兄ちゃんボール貸してー」 「ボールは一個しかないの?」 「あるよ百個ぐらい。お父さんがボールを学校に寄付しようとしたら保管するスペースがないって言われたらしいぜ。凄いヘコんでた」 「そ、そうなんだ……」 そして、何よりその姿はとても幼い。図書館で見せた仕草と同じであり、先程見せた淋しいほど大人びた様子とは全く違う。 子供らしく楽しむ二人と、周りをよく見て潔く人付き合いを諦める二人。きっとどちらかはやむを得ず作られた偽物。 どちらかがそうならば、子供らしい二人が本物であって欲しいと司は思った。
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