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フランソワの能力は、小さく寡黙な生き物達と意識を通わせること。それは即ち、一方的なものに非ず。
相手の感情を読み取ることもあれば、その逆もある。フランソワがマグナの話を聞き、楽しそうだと言う気持ちが更に補完されて強いものとなった。それが漏れ出し、触覚を通して伝播したのだ。
「……?」
フランソワがマグナがやり取りをする傍らで、司は蝶達がまるで踊るように舞い始めたのを疑問に思いながらも、その綺麗な光景に目を奪われた。
「じゃあ俺は行くぜ。またなー」
「いいなあ。私もラルを誘ってみようかしら……」
そして振り向くと、司が見惚れている蝶の舞が目に留まった。どうやら本人も認識していなかったようである。そして今度は再び、蝶達の気持ちがフランソワに伝わった。
「え、皆もお散歩に行きたいの?」
蝶達の気持ちが先ほどと変わっていることは、自分の説明が遅れて伝わった程度にしか考えなかった。更に強いものとなった憧れが叶う喜びに、小さな疑問が勝る筈もない。
「マグナ、やっぱり私も……あら?」
「マグナはせっかちなんだね」
「ああ。イメージ通り、僕達兄弟の中で一番気が短い」
キーパーソンのマグナは、言うだけ言って既に走り去ってしまい影すらも見えない。まさに嵐のような存在であった。
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