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「お父さんがいいって言ったんだからいいんじゃないの?」
「本当にそう言ったかは分からないじゃない。一言一句再現できるの?」
「うーん。司さん、どうなの?」
「できないです……」
二人は相も変わらず対称的だが、楽しいイベントにはしゃぐラルフィに対して、あくまで話の信憑性に拘るレミューリアを冷淡と評するのは忍びない。実際司も心当たりが少しはある。
今正にヴァイスがそこを詳しく聞いている最中だと思われるが、フランソワの話を聞けば聞くほどに、「ゼロは良いとも悪いとも言っていない」と言うニュアンスが浮かび上がって来る。勿論フランソワが己の欲求を満たすために嘘を吐いていると考えられる筈もないため、蝶に聞いてみたらどうかとゼロが言ったのは本当だろう。そしてその蝶は行くと言っているのだから、お咎めもないのだろう。
しかしどこか食い違い、思い違いが含まれているような気がしてならなかった。レミューリアが懐疑的なのも分かる。フランソワやラルフィが心躍らせるのも共感できる。今の司は板挟みのような心境であった。
「……まあ、フランが大丈夫だって言うならラルは行けばいいんじゃない」
レミューリアは溜息交じりにそう言った。
「レミィは?」
「あたしは残るわ。フランの話を信じるかどうか以前に、仕事があるもの」
本人曰く、レミューリアが造り上げた強大な氷のダムは、結晶の密度を変化させることで遮光性をコントロールすることができる。これによって水温を適度に保っているため、数日に一度は調整が必要とのことであった。
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