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「あたしの作業が終わったらラルが水の温度をチェックするんだからね。戻ってきたらやりなさいよ」
「はーい」
結局最後に纏まった通り、レミューリアは仕事でダムに残ることになり、乗り気なラルフィが司と共にフランソワ達の下までやって来た。
「ラルも来てくれるのね!」
「うん。蝶と一緒に散歩なんて楽しそう」
「レミィは?」
「お仕事があるんだってー」
女子二方が盛り上がっている間に、司は小難しい顔をしているヴァイスの側に近寄った。しかし、四足の獣脚で大地に立つヴァイスは股下が非常に高い。耳打ちをするには遠過ぎる。
「どうしたんだい」
それを察して、ヴァイスはわざわざ脚を折り畳んで上半身を近付けてくれた。早速フランソワから詳しい話を聞いた結果を尋ねると、踏み止まるように説得するのは失敗したと聞かされた。
「だけど、事情は大体分かったよ。確かにお父さんは散歩を止めろとは言わなかったみたいだ」
「蝶に聞いてみろって、そう言ったの?」
ゼロであれば当然、フランソワが蝶と意思疎通できることは知っている。他ならまだしも、言葉の綾や冗談でそれをフランソワに言う筈がない。
真相はマグナがイレギュラーとなり、フランソワの意識にブーストを掛けてしまったことがゼロの想定外となったと言うことだが、いくら思慮深いヴァイスでも予想外を予想することは至難であった。
「まあ、心配だから僕も着いて行くよ。お父さんが止めてない以上、無事に戻って来れることが一番だからね」
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