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「どっ、ど、ドラゴンだ……!!」
濡れ雑巾でも絞ったかのように、全身から冷や汗が吹き出すのが分かった。自分の中では大声で叫んだつもりだったのだが、肺がギュッと縮んでしまい実際は蚊の鳴くような声だったことだろう。
「・・・・・・!」
しかしそれでも十分に聞こえたようで、二足で立っていた竜は司が目を覚ましたことに気が付いた。
巨体と言うほどではなかったが、それでも身長は自分の三倍ほどもある。その体はやたらと重々しい装飾で殆ど見えなかったが、顔に白黒の模様が青い光越しに薄らと見えた。目線はやや下を向いており、その先に浮かぶ本を難しそうな表情で眺めている。
(閉じ込められてる……!?)
自分の座っている椅子は、今始めて気が付いた青い光にぐるりと囲まれてしまっていた。そしてどうやらその光は床の魔法陣のようなものから発されており、さらにその魔法陣はこの白黒のドラゴンが作り出しているようであった。
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