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「Пожалуйста, говорите что-то」
「!?」
口を開いたと思った次の瞬間、理解できない言語が耳に飛び込んで来た。面食らった時にはもう、音として通り過ぎた後であった。
「Quid loquaris」
「Please speak something」
「S'il vous plait parler quelque chose」
竜は何かを手当たり次第に試しているようで、次々とどこかで聞いたことのある言語がこちらにぶつけられた。恐らく自分が暮らしている地球の言語。その中で自分が何語を喋れるのか確かめようとしているのだろうか。
「え、え、えっ」
しかしそれが理解できたところでこの竜が何を言いたいのかが分かる訳ではない。然りげ無く英語を聞き流してしまったことは受験を控えた身である司に大きなダメージを与えかねないが、幸か不幸かそんなことに気を回す余裕などなかった。
「何か喋ってみろ」
その数秒後、確かに司の耳に届いた。自分が思っていたよりも少し若々しくも、脳の奥にまで響くような竜の声を。
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