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「……あの!ここはどこなんですか!」
きっと一生分の勇気を振り絞った。
司はこの機を逃せるものかと腹のそこから声を出し、一向に本ばかりで自分の方を見ようとしない竜にその言葉をぶつけた。
「・・・・・・!」
竜は目を見開いて司の方を見た。だがまじまじと眺めた後、また本に目を落とす。
そして親指でページをなぞったかと思えば、黒い文字の羅列本から浮き出て自分を取り囲んでいる青い光の中に吸い込まれた。まるで渦潮にでも飲まれるかのように、引き伸ばされた黒い文字列はぐるぐると魔法陣の周りを旋回しながら徐々に溶け込んだ。
しかし、肝心の返答の方が一向に返ってこない。
「よし……!」
「ぼ、僕の話を……」
「黙っていろ!」
「ひいっ!?」
喋れと言われたかと思えば、やっと通じた言葉で叱咤されることに。司は再び喋れなくなり、文字通り『絶句』する他はなかった。
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