Ab-No-Anomaly

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ルシアとジークを学校に送り出し、昨晩家に帰っていた他の子供もそれぞれの持ち場へと戻って行った。城下の森に掛かっていた朝靄もすっかり消え去り、これから本格的に朝の活動が始まる。 「大体はゼロに聞いたと思うけど、誰かに会ったり会議に出たりする時間以外は可能な限り稟議の仕事を進めてもらうことになるわ。今日の分はゼロが昨晩にギリギリまで捌いてくれたから少な目になってるから安心して頂戴」 「これが少な目?」 アノマリーはロイとレイが運び込んだ書類の山を見て露骨に眉を顰めた。 「別にこんなの、王様が一々全部目を通す必要なんてないわ。それぞれの分野に担当者を設けてその人が進めるようにすれば良いのよ」 「仕方がないじゃない。人類の技術が絡んだ専門的な分野だとゼロしか判断できないことが多いんだから。今人材の育成には力を入れてるから、後任が育つまでの辛抱よ」 「ゼロはちょっと意地っ張りと言うか、頭が固いところがあるのよね。担当者との分担も全員揃ってから一気にやろうとしてそうだわ。できる範囲からどんどん仕事を分けるべきよ。例えばコレなんて、ゼロじゃないといけない理由がどこにも見当たらない」 アノマリーは話しながら無作為に選んだ書類のいくつかに目を通し、その内の一つをピックアップして読み上げた。 「川を挟んだ隣町との交流が盛んになったから、飛べない種族のことも考えて橋を架けたい……結構なことじゃない。予算下ろしてさっさと進めちゃいましょう」 「ちょっと!」 ロゼルサスはゼロから預かったペンを握るアノマリーを制止した。このペンは王族直系である者が魔力を込めると特殊なインクが出る仕組みになっており、これを用いてサインを書くことで案件が成立する。ロゼルサスはこの権限を安易に振るうことは許されないとアノマリーを窘めた。
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