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「あら義妹ちゃん。公務執行妨害でオシオキして欲しいの?ゼロと普段そう言うプレイしてるの?」
「茶化さないで。この書類一枚一枚が、この国の未来を決めるんだってゼロが仕事の説明をする時に言ってたじゃない。面倒でもちゃんと読んで中身を理解してからじゃないとサインなんて書かせないわよ」
「そのゼロの意志を尊重してるから即サインを書いてるんじゃない」
「……どう言うこと?」
「仕事の説明なら私だってちゃんと聞いていたわ。その時ゼロはこうも言っていた。稟議書の最後のページには、その案件の来歴が載ってるんだって」
アノマリーはそう言って、先ほど中身を殆ど読まずにサインを書こうとした書類の束を捲りその最後のページをロゼルサスに見せた。
来歴とはその案件がどのような経緯を辿って来たのかと言うことが示されている。そしてそこにはこの書類が最終承認者の手元に届くのは二度目であると言うことが記されていた。
「これによると、一回目の時は橋を架ける隣町の許可をちゃんと取ってるのか分かるようになってなかったから差し戻しになったそうよ。ってことは、その隣町の許可を取った証明がちゃんと追加されてればオッケーじゃない。それ以外の部分は以前にゼロがちゃんとチェックしたんだから」
「……!」
ロゼルサスはアノマリーから書類を受け取って来歴を見ると、ページを遡り二回目から新規に追加された部分が一か所に纏められていることに気が付いた。更にそのエリアにはアノマリーの言った通り、一回目の時には不足していた隣町の許可を得ていることを示す証書が添えられていた。
流すようにページを捲っただけではとても案件の全体を把握することはできないが、来歴と一回目からの差分を重点的にチェックすることでその案件に問題がないことを間接的に裏付けることができる。
これこそがゼロにはないアノマリーの長所である要領の良さと思い切りの良さであった。
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