Ab-No-Anomaly

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「これくらいサクサクやっていかないと、こんな書類の山いつまで経っても片付かないわよ。これだけで一日使えるわけではないんでしょ?」 「で、でも他に見落としてる部分とか勝手に変えられてる部分があるかもしれないし……」 ロゼルサスは背徳的な行為にアレルギーを持っており、書類を良く読まずにサインをすると言うことに対して最後まで苦言を呈していた。 「そんな生真面目なことばっかりやってるから公務に圧し潰されて、子供と一緒に食事を取ることもできなくなってるんじゃない」 「うっ……」 その痛恨の一言はロゼルサスの表情を歪めるには十分過ぎる程であった。 今までゼロが『こなせてしまう』が故に、常軌を逸した仕事量を一身に背負うことを止められなかった。そのために他の何か犠牲になったとしても、国のためだ、尊いことだと自分に言い聞かせて見送って来た。 しかしアノマリーの言う通り、本来このシステムは破綻しており今アノマリーがやったように要点のみを抑えた簡易的なチェックでなければ稟議を処理することができない状況になっている。 「貴女の言う通り、こう言うチェックのやり方じゃいつか大きなミスを見落とすでしょうし悪意の籠った案件に足元を掬われることだってあるかもしれないわね。でもいっそ、一回くらいミスしたら良いのよ。それでゼロが危機感を持って仕事の在り方を改善してくれるならそれで良いじゃない」 「……そうね。今度そう言う風に提案してみるわ」 一度ロゼルサスが折れてからはアノマリーの独壇場であった。先ほどのように過去の履歴を引用し時には類似の案件と見比べるなど、あらゆるショートカットを駆使してアノマリーは山のような稟議の案件を瞬く間に片付けてしまった。
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