Ab-No-Anomaly

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チミィのアノマリーは紅茶を運びに来たロゼルサスを捕まえ、共に一旦廊下まで出た。 「ちょっと。あの子どうなってるの。ずっと食べられる寸前の小動物みたいな態度なんだけど」 「私にそんなこと言われても困るわよ」 「前回はどんな感じだったの?」 「確か面と向かって話すのはこれが初めてだったと思うわ。草食動物をベースにした獣人、特に体も小さいウサギなんて技量とは関係なしに軽んじられがち。それなのに町長を任されるなんて、一体どんな人物なんだろうってゼロも会うのを楽しみにしていたのよ」 「だけどのっぴきならない用件が入ってしまったと……はあ。それじゃあ無碍に追い返すわけにもいかないわね。急用が入ってしまったとでも言おうと思ったのに」 「元々ゼロが目を掛けてなくたってそんなことしちゃダメよ。何のために対談をするのかちゃんと説明したでしょう」 「あれじゃあコミュニケーションのへったくれもないでしょ……!」 アノマリーは大声を出しかけて、ふと顎を持ち上げて背後の扉を見る。チミィがその身体的特徴に恥じぬ聴力の持ち主であれば、更に恐縮させる結果になりかねない。 「とにかく、普通にやってたんじゃラチが明かないわ。ここは私流のやり方でやらせてもらうわね」 「え、ちょっと……」 アノマリーの目的は相談をすることではなく、この了承を得ておくことにあった。ロゼルサスは快諾したわけではないが、引き留める間もなく立ち去ってしまったアノマリーを見送ることしかできなかった。 「すまない。少しばかり茶菓子の相談をしていてな」 「は、はあ……確かにこの飲み物は綺麗な色をしていて澄んだ香りがします。きっと甘味に合うと思います……」 ゼロが丹念に紅茶を選んだ甲斐もあり、僅かにチミィの緊張が解れ始めた。アノマリーはこの機を逃さず次の手を打った。
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