Ab-No-Anomaly

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「うむ。上に立つ者に相応しい先見の明だ。これからも町民を導くに当たって大いに役立つことだろう」 「そんな大袈裟な。私は臆病なだけです。人に後ろ指を指されるのが怖くて、いつもそうならないように必死なだけです……」 (またブルブルモードに戻りかけてるがそうはさせん……って、ゼロなら言うかしら) アノマリーは竜人特有の長い首を下にしならせた。先ほど広げた書類に顔を近付けたと言う体だが、目的は別にある。 「えっ、あっ、ちょっと……!」 「ここに過去橋を作った際の事例をまとめてある。どんな職人に依頼を掛けどんな材料をどれくらい使ったのか。詳しい手順も記してある。是非とも活用して欲しい」 正面に向き合わず、隣に座ったことも全てはここで狙い撃つため。チミィはアノマリーの言葉などまるで耳に入っていなかった。種族の垣根を越えて頂点に立つだろうとされている端麗なゼロの横顔が直ぐ傍まで来ているからである。 「どうした。何か資料について意見があるのか?」 「いえ、資料は良いんですが、顔が……!」 同時にアノマリーは片腕を広げてチミィを上から跨ぎ、顔と合わせて挟み込むように手を机に着いた。左方はゼロの顔に、上方と右方はゼロの右手に、下方と後方は椅子に、そして前方は机の淵に、チミィは完全に取り囲まれてしまった。そして逃げ場を奪った状態でアノマリーは更に顔を近付けて、遂に頬同士が軽く触れあった。 「ひょええ……」 「おっと、済まない。しかし最近目が疲れ気味でな。小さい文字はこうしなくては見えにくい」 「そ、そうでしたか」 「嫌か?」 「そんな滅相もございません!目上憧れ雨あられの王様の寵愛を賜ることができるなんて至福でございます!ただ、ただ……!」 「ただ、何だ?」 アノマリーは更に囲いを狭めた。
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