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「王様いけませんそれ以上は!私には確かに心に決めた人はまだいませんが、王様には王妃様が……私なんかと御戯れになってはいけません!」
「そうだな。確かに戯れが過ぎたようだ」
アノマリーはようやく顔と手を退けてチミィを解放した。
「親密なコミュニケーションを取ろうとしたのだが、どうやら加減を間違えてしまったようだ。何事も度が過ぎてしまうのは良くないな」
「・・・・・・」
洞察に長けたチミィはアノマリーの見込み通りその言葉が真に伝えようとする内容を瞬時に読み取り、それと同時に鑑みた。
「私の謙遜も、やりすぎだったと言うことですね。せっかく私と交流を深めようとして下さった王様に、かえって失礼な態度を取ってしまいました……」
「そこまで深刻に考えてはいないが、そうだな。少しばかり話しにくかったぞ」
「申し訳ありません」
これまでとは異なり本当に苦言を呈された形になるが、チミィは怯えたり委縮したりすることなくきっぱりと一度頭を下げた。その仕草や表情はこれまでと同一人物であるとはとても思えない変貌ぶりであり、この凛とした態度を知っている者なら確かに町長に推薦しても全く不自然ではない。それを見極めることができたと言うだけでも、ゼロの代理としての役目は十分に果たせたと言える。
「では気を取り直して、先ほどの続きを話すとしよう」
「はい。何点かお伺いしたいことがあります」
その後は過去の資料の話題を継続しつつ、時折飲み食いを切っ掛けに談笑を交わし概ね当初思い描いていた通りの有意義な面談とすることができた。
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