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「冷え固まりにくいようにするためか、結構ホットチョコレートの温度が高めになっているな。紙コップ越しにかなりの熱が伝わって来る」
「火傷しないようにお気を付けて。キャンディーを食べ終える頃には飲み頃になってますから」
「成る程。これで冷やされることも見越して熱めになっているのか。気遣い痛み入る」
道端で買った氷菓であっても、隙有らばそこに凝らされた買った者を楽しませる工夫を分析して称えようとする。ゼロ本人であっても間違いなくそうしていたであろう行動を的確にアノマリーは再現しているが、それだけにチョコレートの選択だけ異なっていることが気掛かりであった。そして何より、本当に気掛かりであったのは一つだけ心当たりがあることであった。
(いや、まさか……そんな下らない理由で……)
口に出すことも憚られるような想像をロゼルサスが思い浮かべているのを尻目に、アノマリーは早速そこそこのサイズ感があるピンク色のアイスキャンディーにホワイトチョコレートをディップした。
「ロズ、見てくれ。キャンディーを入れて回すとチョコレートに色が溶け出してとても綺麗だ」
「あんまり浸けると溶けちゃうんじゃない?」
「た、確かにそうだな。先端が崩れそうだ」
アノマリーは慌ててキャンディーを引き上げると口に含んで堪能した。
「これは確かに美味だな。ふやけたキャンディーを一気に舐め取ることができる愉悦は、普通に食べるだけでは味わうことのできない贅沢だ。じゅる……」
「ッ!」
嫌な予感は的中した。今までの貯金を全て吐き出しても清算できない程の大減点であった。
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