Ab-No-Anomaly

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幸いにも、アノマリーの影武者公務は初日でほぼ全ての山場を抑えることができた。それ以降は外出が必須となる公務やイベントもなく、数件入っていた面談でチミィより癖のある者が現れることもなかった。 ロゼルサスはただ、傷口に塩を塗り込まれるかのような、刺激のない日々に積み重なるデスクワークに喘ぐアノマリーを宥めていれば良かった。城主の不在と言う大きな危機を無難に乗り切れたこの数日間を考えれば、憂さ晴らしにアノマリーが時折仕掛けて来るちょっかいなど容易く我慢できる。 しかし、絶えず揺らぎ続ける運命の中で平穏はそう長く続かない。書斎に稟議書を運び込んで来たレイが二人にそれを告げた。 「御二方とも、連絡が二つほどあります」 「助かるわ」 「まだ何も言ってませんが……」 「もうニュースの内容なんてどうでも良いわよ。何か耳寄りの話でもないと退屈で死んじゃうわ」 「は、はぁ」 レイはアノマリーのこの手の発言には慣れていたが、いつものように愛想笑いで軽く受け流そうとはしなかった。その様子から緊張を保ちたいと言う意志が伝わり、最初からそうであったロゼルサスに倣うようにアノマリーも静かに耳を傾けた。 「一つはゼロ様からの伝言です。事件の核心に触れることができたので、早ければ数日以内に戻ってこれるとのことです」 「あら、何よりね。張り詰めた毎日を過ごしてロクに寝てもいない姿が目に浮かぶわ。こう、右の目元だけ白いからそっちのクマだけ凄く目立つの」 「く、ふっ……」 「ちょっと、止めなさいよ……!」 明るい話題でゼロの名前が出たことで緊張が少し和らいだアノマリーは、間髪入れずにレイとロゼルサスに『お裾分け』をした。
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