Ab-No-Anomaly

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しかしレイは相変わらず浮かない表情を浮かべている。そこから読み取れる通り、持って来たものは朗報だけではなかった。勿体を付けた二つ目の知らせは、ゼロに突発的な面会の希望が入ったと言うものであった。 「それも、できるなら今からが良いと仰っていて……」 「そんなもの断れば良いじゃない。スケジュールの都合が付かないからって」 「そんなもの招いちゃえば良いじゃない。私は構わないわよ」 二人が正反対の意見を述べ、どちらかと言えばレイはロゼルサス寄りの心境であったがそれには踏み切れない理由が存在していた。 「あら、義妹ちゃんにしては珍しくドライな意見なのね」 「変な前例作ると後々困るのよ」 本来、自己都合でこの国の長たるゼロにスケジュールの変更を要望するなど余りにも畏れ多い行為である。しかし、それはあくまでゼロ側に誠意を尽くす事情がない場合に限られる。 「その面会を希望しているのが、エニム町長なんです」 「エニム……あの、ウールウェスタンの……!?」 ロゼルサスが呆気に取られるのも無理はなく、ウールウェスタンとはゼロが鉄道を発展させるために参与を依頼した町であり、今正にゼロが捜査している汽車の暴走事件の発端となった場所である。 無論、事件の真相を解き明かすには現場となった町の住民の協力は欠かすことはできず、町長ともなればその重要度は計り知れない。そんな要人が依頼を待たず直々にゼロの下を訪れていると言う現状が明らかになれば、無碍に追い返すと言う選択肢はロゼルサスの頭からは消えていた。 「どんな用件なのかしら。捜査に協力するために情報を提供してくれるならありがたいのだけど……」 「それが、ゼロ様に直接会って話したいそうで内容は聞き出せませんでした」 当の本人が不在となる状況とすれ違いも同然のタイミングで扱いを間違えることは許されない人物の来訪してしまったことに二人は怖じ気付いたが、アノマリーの意見は変わらずであった。
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