Ab-No-Anomaly

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「金銭的な損失は出ていない、だと?あれだけの資材をゴミ屑に変えておいてそのような言葉が吐けるとは、流石王族はスケールが違う」 (・・・・・・) もはや隠す気もない限りなく率直な嫌味であるが、アノマリーはその刺々しさに惑わされることなく発言の本質を見抜くことに集中した。 「殆ど損壊の出ていない駅や線路をゴミ屑呼ばわりすると言うことは……それにはもう、価値がないと言いたい訳か」 「そうだ。例の事故は大々的に報道され、当然だが我がウールウェスタンの住人にも知れ渡っている。あれ程までに危険で悲惨な事故が起こって尚、機関車とやらに乗りたがる者がどれだけいるのだろな」 いくら無傷のまま施設や設備が保たれていようとも、利用する者がいなければ無用の長物となる。エニムは直接的な金銭で換算できる損失よりもそのイメージダウンによる損失の方が遥かに大きいと主張した。 「このまま誰の心も寄り付かず廃れてしまえば、あの施設や機械が如何に素晴らしいものであろうとも無用の長物だ。改めて言うが、ゴミ屑と大差はない」 「……確かに犯人を暴こうとも、再び悪意に曝されるかもしれないと言う人々の不安を払拭するにはそれなりの時間が必要かもしれん。しかし鉄道は物資の輸送にも活用することができる。先ずは其方側から率先して運用する手立ても考えている」 この場にロゼルサス、或いはロイかレイが居れば驚愕していたことは間違いない。何故なら今アノマリーが口にした鉄道の運用方針はゼロから事前に伝えられたものではないからである。 これまでに集約した情報から瞬時にゼロが立てるであろう方策を推理し、間に合わせの詭弁であることを悟られぬようにさも事前に決まっていたかのように口にする。本来であればこのような対応は望ましくないが、そうしてでも引き下がるべきではない状況だと言うことをアノマリーは理解していた。
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