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アノマリーは抑え込んでいた色気を全て解き放った。
無論姿はゼロのままであるが、それは容姿が異なると言う程度では全く減衰しない。それどころか、アノマリーと血縁関係で結ばれ多くの共通因子を有するゼロは性別すら関係なしに数多の輩を魅了する妖艶の持ち主である。
ゼロ本人もそれを真似たアノマリーも、それとは正反対のベクトルを持つ幽玄な立ち振る舞いをぶつけることで辛うじて打ち消しているに過ぎない。故にアノマリーがそれを止めるだけで、噎せ返るような甘ったるい空気が瞬く間に広がった。
「な、何のつもりだ……!?」
「私は妻も子もいる身だ。柔軟な交渉のためとは言え、シてやれることには限りがある……だがそれはあくまで表向きの顔で相手をするならの話だ。内密にしてくれるのなら、もう一つの性(サガ)を町長殿だけには見せてやっても構わない」
アノマリーは上から衣服をはだけさせ、首元で見切れていた白黒模様を更に先まで見えるようにした。その手の知識を持たずとも、ある程度経験を積んだ大人であればその行為が何を示しているかは明らかである。
「事件の件で町長殿のことは少し調べさせてもらっている。少々失礼ながら身辺のこともだ。独り身で愛人を囲っている様子もない。孤高で厳格な佇まいと言ったところだが、その胸の中に寂しさがあるのではないか。私ならそれを『補填』してやることもできるぞ……」
「ッ」
危機感を覚えたエニムは足で地面を蹴ることで強引に椅子を引き、立ち上がって後退りをした。しかしアノマリーから逃れることはできず、壁際まで追い込まれた。
「悪ふざけが過ぎるぞ!そもそも、私にそのような趣味はない!」
「この手の嗜好は後天的に開花することも珍しくない。物は試しと言うであろう?私はこの言葉がとても好きだ」
「よ、止せっ……」
舌なめずりをしてエニムの背に手を回すアノマリーの風貌は魔法による変身など緩衝の役目をまるで成さず、完全に捕食者そのものであった。![d6311889-d022-4f7f-bf7b-89ba6ca739c0](https://img.estar.jp/public/user_upload/d6311889-d022-4f7f-bf7b-89ba6ca739c0.jpg?width=800&format=jpg)
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