Ab-No-Anomaly

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「この口で、手で、尾で、コトによってはそれ以上の場所も使って極楽に導いてやろう」 耳元でそう囁き、舌を何度か転がして粘り気のある音を響かせる。エニムの動揺がピークに達し精神の奥底にあるものが浮き彫りになったところで、突如アノマリーはその両肩を掴み鬼気迫る表情で睨み付けた。 「この者を手放し給へ」 「ッ……!」 片目を大きく見開きエニムの瞳に強く訴え掛けると、その奥底にあった魔法陣が砕け散り効力を失った。全身の力が抜け、その場に崩れようとするエニムをアノマリーは再び椅子まで運んで楽な姿勢を取らせた。 「わ、私は一体何を……?」 数分後、アノマリーが衣服の乱れを直している最中にエニムは我に返り不思議そうな表情で辺りを見渡した。 「お目覚めか町長殿。気分はどうだ」 「良くも悪くもないが……」 その後に続いた言葉によると、ここまで来てゼロと何か話したところまでは覚えているがそれ以外は記憶が曖昧になっているとのことであった。 「ふむ。やはり奴等の差し金であったか」 「もし宜しければ、此処で何があったのか説明頂けないだろうか。私がどんな失礼をしでかしたのかも」 「後者については気にすることなどない。魔法で操られ、他者の主張を代弁させられていたに過ぎないのだからな」 先ほどアノマリーが解除したものは、瞳を経由して他者の脳に刻み込むことで効力を発揮する洗脳の魔法陣であった。エニムはそれに操られたことで、ゼロの下を訪問し嫌がらせのような言動を繰り返していた。 「何と言う不甲斐ない真似を……」 「繰り返すがその点については重要でないし、私も全く気にしていない。寧ろこの場を訪れてくれたことは値千金だ」 洗脳の効力を持つ魔法は上位の存在であり、無関係の輩を身代わりにして施せるような代物ではない。それを仕込んだ犯人は高い確率でエニムに直接相対している。 アノマリーは正気を取り戻したエニムから重要な情報を聞き出すことに成功した。
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