Ab-No-Anomaly

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その情報は事件の前後に絞られ、特に外部との交易が徹底的にマークされていた。ロゼルサスにはそれ以上詳しいことは読み取れなかったが、アノマリーがエニムが訪れる遥かに前から準備を進めていたことは理解できた。 「ここ数日、仕事の合間を縫ってやっていたのはコレだったのね」 「そうよ。ロイちゃんとレイちゃんにも協力してもらったわ」 「言ってくれたら私だって手伝ったのに」 「冗談キツイわよ。王妃に諜報活動なんてさせられるわけないじゃない」 「それを言うなら貴女だって王姉でしょう。幾ら放浪生活で知名度が低いからって……え、まさか」 「ま、そう言う一面もあるってことよ。専門ではないけど。あくまで放浪は私の趣味で、その傍ら色んな情報が集まるから手が空いた時にチョロっとね」 アノマリーは各地に根深いコネクションを築いており、それらが組み上げるネットワークは随一である。今回もエニムの背景を洗うべく大いに活用され、ロイやレイが代役としてアノマリーの声を届けるだけで瞬く間に情報が集まった。 その一つをひけらかすかのように、アノマリーは書類を一枚抜き出して手の甲でパンパンと叩いた。 「あのエニムって子も中々のやり手ねえ。私達(くに)が補助金を前払いでたんまり出してあげたのに、着手したのはウールウェスタンの町境までなんだもの」 「え?でも線路が途切れていたなんて話は聞いてないわ。脱線はしちゃったけど、線路自体は隣町までちゃんと続いていたのは私もこの目で確かめた」 「隣町に高額で売り付けたのよ。鉄材と鉄の扱いに長けた人材と、ゼロが伝授した線路作りのノウハウを有りっ丈ね。作業自体は全てウールウェスタンの作業員がこなして使われている材料も全てウールウェスタンのものだから、端から見ればちゃんと国の要望通り隣町までウールウェスタンが建設をやり通したように見えるってワケ」
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