Ab-No-Anomaly

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「いや、これは明らかに此方が悪い。甘過ぎた。コンステレイションの成り立ちを考えれば、恨まれて当然だ」 ゼロが魔法中心の社会を見直したことで、高度な魔法を披露することで崇拝され同時に収入を得ていたコンステレイションは経営が立ち行かなくなった。 そこでゼロは救いの手を差し伸べると称して、コンステレイションに科学技術の宣伝を兼ねたショーを行うことを提案した。それと同時に、新たな方針を安定させるための指導者としてカシオを団長の座に据えた。 「その辺はあまり追い掛けてなかったけど、随分と無神経な真似をしていたのね」 「コンステレイションが魔法を信仰する集団であることは知っていた。プロモーションを行う過程で、少しでも科学技術に親しみを持ってくれたらと思ったのだが……今考えれば、元の団員にとってはこれ以上の屈辱はなかったのかも知れないな」 況してや、アウリーはゼロが推進した人事によって団長の座を失っている。本人は元より、アウリーを慕っていた多くのメンバーから恨みを持たれていたことにゼロは気が付いていたなかった。 「そんな連中のど真ん中にケセルやマグナを案内してしまったことは迂闊だった。事を起こした連中に情状酌量の余地があるとは思わないが、それでも三人を巻き込んでしまったことは私の落ち度と言っても過言ではない」 アウリー達は一座の存続のため、煮え繰り返る腸(はらわた)を抑えながら辛うじて国の方針に従ってくれていたと言う内情をゼロは読み切れなかった。表面上の態度を間に受け、自分の方針に理解を示してくれたのだと解釈してしまった。 「覚悟していた筈だった……それなのに、気が付けば改革には痛みが伴うと言う事実から無意識に目を逸らしてしまっていた。私はまだまだ甘い」 ゼロは眉間に手首を押し当て、わざわざ明るくした部屋に再び闇を作り出す。その裏には、姉に見られたくない雫が湛えられていた。
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