Ab-No-Anomaly

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「そう言えば、残りの1パーセントはどうして埋まらないの?」 「何か不足があるわけではない。ただ、もう少し裏付けが欲しかったと言うだけだ」 ゼロは顔を傾け、暗い面をアノマリーに向けながら答えた。確証には至っているが、それは一本のロジックを辿って得られたものであった。より堅実に、盤石に、多方面からの根拠があれば安心できる。 凡な輩が言えば100パーセントを110パーセントにするような努力だが、責任ある立場でありそれに相応しい慎重さを持っているゼロには到底蔑ろにはできぬ過程である。 この1パーセントは遠い。最も明確だったルートから敢えて遠回りをして、別方向からの検討をフラットな目線からやり直す必要がある。それはこれまで積み上げきた99パーセントに匹敵する重みを持ち、当然それを成し遂げるにはこれまでと同じだけの時間や労力を費やさなければならない。 「ほんの少し、安らぎが欲しかった。しかし誰かに会えば後ろ髪を引かれる。この99パーセントで結論を急いでしまう、きっと……」 故に、ゼロはこの事件の山場は越したと言っても遣り果せたとは言わなかった。今宵は単なる息継ぎであり、夜が明ける頃には最愛の妻に顔を見せることすらなく此処を去る。アノマリーは論理では説明できない事象(A n o m a l y)でそれを察知し、幼い独り善がりを正すために弟を待ち構えていた。 「まーた隙有らばカッコ付けようとしちゃって。もっと頼っても良いのよ?」 「何とでも言ってくれ。私はそれでも皆をこれ以上巻き込みたくはない」 「義妹ちゃんや子供達じゃないわ。この私のことよ。もう十分に巻き込んでるじゃない。中途半端なことやってないで、『お姉ちゃん、助けて』って言っちゃえば良いのに」 「だっ、誰がそんなこと……!」 「ふーん。じゃあこれは私が貰っちゃおうかしら」 アノマリーはそう言いながら、胸の間に挟んであった紙を取り出した。
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