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「……?」
ゼロは未だに覚めやらぬ意識で四つ折りにされたその紙を開き、次に目を見開いた。頭の中に掛かって靄が吹き飛び、椅子から跳ね起きてそのまま立ち上がった。
「どこで、これを……!?」
折り目を丁寧に伸ばし、机の上に広げたその紙に描かれていたのはとある魔法陣のスケッチであった。回答によればアノマリーが描き起こしたものであるとのことであったが、重要なのはその魔法陣の内容である。
「ぐっ、早く捜査本部に戻って確認しなければ」
司がトンネル内でパニックモンスターと格闘していた際に、その瞳の中に魔法陣を見たと証言した。後の捜査によりそれはアウリーが施したものであると推定され、その記憶から描き起こされたスケッチが資料として残されている。
今目の前にある、捜査資料を見ていない筈のアノマリーが描いたスケッチは、司が見たとされている洗脳の魔法陣と殆ど完全に一致していた。
「どこでこの魔法陣を見た?」
「ウールウェスタンの町長、エニムの瞳の中よ」
「何だと!?」
自分が城を開けた隙に刺客が入り込んでいたことを知ったゼロは仰天した。しかもそれはアウリーによって洗脳を施された可能性が非常に高く、ゼロが渇望していた最後の一手を満たし得る出来事である。
「多分留守を狙って来たわけではなかったと思うわ。寧ろ城の中で捜査を進めてると勘違いして、それをクレームで邪魔をして来た。あわよくば大事にしてまたイメージダウンを狙ったような感じね」
「ウールウェスタンが被った迷惑に対する補填を吹っ掛けて来たと言うことか。此方の弱味であることは分かっていたが、更にそれを利用されるとは……」
「まあそんな感じ。最初は収支のデータを叩き付けて帰ってもらう予定だったけど、途中から様子がおかしかったから精神的に揺さ振って洗脳を解除する方針に切り替えたわ。その時に浮かび上がった魔法陣がソレよ」
「何と言う……」
ゼロは洗脳された町長が刺客として送り込まれたと言う事件のインパクトに気を取られ、どうやってエニムの精神を揺さぶったのかを聞きそびれた。
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