Ab-No-Anomaly

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「私が捜査するとボロが出そうだから一旦は帰しちゃったけど、後日町長さんに近頃会った人物を洗い出してみたら良いんじゃないかしら」 アノマリーの言う通り、洗脳は基本的に一対一で施すものであるため犯人候補のアウリーはエニムと接触している可能性が高い。 本来であれば洗脳は勘付かれる前に解除してしまえば証拠は残らず、術者にとって非常に低リスクで利便性の高い攻撃手段である。しかし、エニムの相手をした人物がゼロではなく人心掌握に長けたアノマリーであったことが運の尽きであった。 脳の底に刻み込まれた洗脳の魔法陣は、被術者に強い精神的な動揺が加わると瞳に浮かび上がると言う特性を持っている。司は偶然にも極限状態でリオンと戦闘を行った際にそれを目撃し、値千金のスケッチを描き残した。そしてアノマリーは意図的に炙り出しを行い同じことをした。 「この二枚のスケッチが一致すれば、この事件に決着を付けることができる……!」 魔法陣にも筆跡の概念が存在し、二枚のスケッチからエニムとリオンが共通の術者から洗脳を受けたことを証明することができる。これでエニムとアウリーの接触が確認できれば、ゼロが渇望していた別方面からの根拠を手に入れることができると言っても過言ではない。 「どう?バッチリ役に立ったでしょ。今度こそ『お姉ちゃん、ありがとう』って言ってもらうわよ」 「お、お……」 「おー?」 「折るな!こんな貴重な物をッ……!!」 「あはははは!」 その返事にアノマリーは大満足であった。 「一回やってみたかったのよ、胸に挟むやつ。でもそのままのサイズだったらはみ出ちゃうでしょ?ほら、見て見て」 「挟み直すな!折り目に加えて皺まで増えたら証拠能力が失われる!」 「じゃあ取り出しなさい。上だけ引っ張ったら破れちゃうから、ちゃんと手を差し込んで谷間を広げてね」 「ぐぅ……!」 暫くの間、姉弟は他の家族が寝静まった夜であることも忘れて戯れに興じた。
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