Ab-No-Anomaly

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ロゼルサスは爽やかな目覚めに違和感を覚えた。アノマリーと共に過ごしている間、特に寝る際には特有の不慣れな緊張感があり僅かに眠りが浅かったが、今朝に限ってはそれがなかった。 それどころか、或いはやはりと言うべきかアノマリー本人も寝室におらず、眠い目を擦りながら場内を探すとこれまでは自ら寄り付こうとしなかった書斎で窓の外を眺めながら佇んでいた。 「何かあったの?」 「ううん。別に」 はぐらかすアノマリーからは答えは得られないと判断して周囲を見渡すと、見覚えがあるようでない書類がいくつかの束になって机の上に点在している。それは一見これまでこなしていた稟議に用いられるものであったが、一番上に置いてあったものを一枚手に取ると明らかに異質な点が目に留まった。 「これ、今日のじゃない」 「昨晩はあんまり眠れなくてね。夜の見回りをしてたロイちゃんを捕まえて、先に貰ってきちゃった」 「じゃあ、もう全部済ませちゃったってこと?やる気出してくれたのは良いけど、ちょっと不気味ね……」 「また義妹ちゃんはそんなこと言う。もっと義理のお姉ちゃんを頼ってくれても良いのよ?」 「ねえ、やっぱり何かあったんじゃないの」 「何もないわよ。ただ、思い出しただけ。当たり前のことを思い出しただけなの。私はいつでも貴方達のことを助けてあげる。だって私は……お姉ちゃんなんだもの」 アノマリーはもう一度窓の方を振り返って爽やかな朝の風を浴びた。その時、目が覚め切ったロゼルサスはアノマリーの装いがこれまでと異なっていることにようやく気が付いた。 今のアノマリーは魔法でゼロに変身していないが、その服装は普段のラフなものではなくゼロと同じ王族の衣装であった。
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