Ab-No-Anomaly

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アノマリーは表舞台に顔を出さないため、ロゼルサスがその姿を見るのは初めてのことであった。しかし今まで見過ごしていたことから分かるように、違和感はまるで存在しない。煌びやかで気品のある出で立ちである。 ロゼルサスの中で、僅かにずれていた歯車が噛み合うような音が響いた。 「まんまと騙されたわ。貴女、さては仕事できるわね」 「人聞きの悪いこと言わないでよ。別にできないフリなんてしてないでしょ」 「これまでロクに帰っても来ないで遊び回ってたじゃない。レイも言ってたのよ、根は真面目だって」 「てんでナンセンス。美談に落とし込もうとし過ぎよ。私はそんな出来た存在じゃないわ」 アノマリーはロゼルサスの方を向きながら窓枠に腰掛けた。これまでならマナーを重視するロゼルサスから眉を顰められそうな行為だが、今は自分が不真面目だとアピールするために無理をしているようにも見えた。 「確かに私は、才能そのものはゼロ以上だと言われてた時期もあった。その気になればある程度のことはできるわ。でもね、『その気になれるかどうか』も才能の一種なのよ。ゼロは我が子のため、国民のため、そして貴女のために命を燃やせる。それは私が持ってるどんな才能よりも眩く尊いもの」 だからこそ、宝の持ち腐れを体現している自分などではなく原石を磨き上げて才を成し、それを他者のために使うことができるゼロを今以上に称えてあげて欲しいとアノマリーは言った。 「それは分かったけど、ここ数日は真面目にできてたじゃない。まあ、ちょっと怪しいところあったけど……それでも、本当に助かったと思ってる」 「あら、嬉しい言葉ね。だけどさっきも言った通り、私は姉として弟を助けただけよ。私が唯一、真面目になれる瞬間。だから私の出番なんて無い方が本当は良いの」
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