Ab-No-Anomaly

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危機的状況であるかに関わらず、常に王の務めに忙殺されているゼロの姿を知っているロゼルサスには受け入れがたいニュアンスであったが、アノマリーはこれまでゼロを手伝って来なかった理由を詳しく語り始めた。 「私は昔から第七感に自信があったの」 「六じゃなくて?」 「魔法使いの間では、第六感と言えば魔法知覚のことを言うのよ。だから俗に言うところの第六感は繰り下げで第七感ってワケ」 「何かありがたみが減ったような気がするわ」 「どうしてよ!Seventh Sense(セブンス・センス)、カッコいいじゃない!……まあ、それはともかくとして」 アノマリーは生まれ付き、自分が何をすべきかを察知できる能力が群を抜いて優れていた。ゼロを含む多くの賢人がその経験や知識を総動員してより良い判断を下そうとしているのに対して、アノマリーは理では説明の付かない直感を信じて動く。そして、それは決まって功を奏し物事を正しき方向に導くと言う正のジンクスを我が物として来た。 しかし直感はあくまでも直感であり、アノマリーはそれに誇りを持ちつつも誰かを導くために使うものではないと考えていた。 「私を囲うこの星回りも、いつかは逆行する日が来る。それは今日かもしれないし明日かもしれない。百年後も来ないかもしれない。だから、この力で誰かを助けようなんて考えちゃいけない。それをしようとした正にその時、今までの反動が来てしまうかもしれないもの。この命運に乗せられるのは自分の身体ただ一つだけ。それが私の決めた人生のルールだった」 「それが、今まで貴女が放浪を続けて来た理由なのね」 「私は自分が幸せになれる自信はあった。だけど、他の誰かを幸せにすることはできない。そんな身勝手な女よ」
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