Ab-No-Anomaly

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「確証はあったわ。弟を助けるべきだって。でもそれはいつもの第七感によるお告げなのか、自分自身の強い望みだったのか、私には分からなかった。できるのかどうかすら……」 終始に渡って飄々とした態度を貫いて来たように見えたアノマリーだが、内心はゼロを助けたい気持ちと何処へ転ぶかも分からぬ自身の勘に家族の運命を委ねることへの不安が鬩ぎ合い揺れ続けていた。本当は普段のように、のらりくらりと躱して逃げてしまいたい。しかしそれは勘であろうと望みであろうと、確かに心の中を過ったゼロを助けたいと言う自身の気持ちに反することになる。 そんなアノマリーを導いたのは、ゼロの姿と立場を借り受けていると言う事実そのものであった。悩んだ末に辿り着いた答えと覚悟はアノマリーを一つ上のステージへと押し上げた。 「でも、今度こそピーンと来たの。今の私はゼロなんだから、勘に任せで動いたりしないんだって。目の前の困難にがっぷり四つなんて、久し振りで緊張しちゃったわ」 漠然とした直感を知識と経験で補強する。足りない分はロイやレイが力を貸してくれた。形のない感覚は磁針、ロジックは運命の海原を行く大船。一人空を行くこれまでの放浪の旅とは異なる、多くの仲間を乗せたある種の航海を終えたアノマリーは大きな達成感に満ち溢れていた。 「何か、そう聞くと貴女とゼロの美味しいとこ取りじゃない。結局それを一人でやっちゃうんだから大したものね。正直、敵わない。流石はゼロと……私の姉だわ。義理の、ね」 「義妹ちゃん……!」 ロゼルサスがゼロと結ばれて血縁者になってから随分と長い年月が経過したが、アノマリーは今日初めて家族の一員と認める言葉を聞いた。それは船主として自分達を運んでくれたアノマリーに対するロゼルサスの敬意の表れでもあった。 「今夜はくっ付いて寝ると決めたわ。親睦を深めましょう!」 「御断りよ!」 感激するアノマリーを煩わしそうにあしらいつつ、今夜からゼロが帰って来るまでの僅かな間だけは緊張せず穏やかに眠れるだろうとロゼルサスは密かに喜んだ。
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