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(できるだけ小さいやつを取ろう。いや、こう言う時は小さいのより軽い方が良いのかな……?)
司が選んだのはマグナと二度目の昼食を共にすることであった。今回の目的は食事ではなく会話であるためわざわざパンを手に取る必要はないのだが、ここで吟味までしてしまうのが司から生真面目さが抜け切っていない証拠である。
「あれ、司は下で食べて来たんじゃないの?」
「もうちょっと食べたくなってね」
シダの部屋には外から内に木の板が突き出したような螺旋階段があり、普段は遥か高所に吊るされたハンモックへの道になっているが、こうした小休止にも適任であった。
司はマグナよりも一段高い場所に座り、白い粉が塗された菓子パンを一口頬張った。
「そう言えば、レミューリアは普段から怒るとあんな感じなの?」
「んー、多分そうなんじゃないか?イチイチ怒ってるところなんて覚えてないから、分かんないけど」
(やっぱり、マグナはそう言うタイプか……)
案の定、とは口にしなかったがマグナが自発的に気が付くことには期待できそうにない。ここはやはりここは自分から切り出す他はないと決意を固めるべく、満腹に鞭を打って菓子パンをもう一口頬張る。
なお司はパンの大きさとその次に密度を気にしていたが、最も注意すべきは味の質であることを思い知った。濃密な甘味がしみ込んだスポンジ状の生地が口の中にべったりと張り付き、話を切り出すタイミングを刻々と遅らせた。
「怒られてない時は、よくレミューリアと遊んだりするの?」
「そう言えば遊んでないなあ。結構前だと、たまに皆で鬼ごっことかした時に一緒だった気がするけど」
「最近だとレミューリアはもっぱらフランソワとかヴァイスとか、静かなタイプ組んでることが多いよな。ラルフィは例外だけど」
密かに聞き耳を立てていたジークが近況を補足したことを皮切りに、グループ化はこの部屋全体の話題となった。
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