雪消の候

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「何だよそれ、まるで俺が嫌われてるみたいじゃん!」 (ゆっくり問い掛けて考えさせるつもりだったのに、上手く行かないもんだな……) 指導者として堅実に立ち回ろうとした司の目論見は崩れ、ヒートアップしたマグナの勢いはどうにも止めることができなかった。 成長するにつれて遊びの種類が合わなくなったと言う名目はもう使えない。突き付けられているのは、血を分けた兄弟からただ個人的に避けられていると言う事実のみである。 「俺はレミューリアに嫌われるようなことしてないぞ!」 「それは、まあ……本人にしか分からないところもあるんじゃないかな」 司はあくまでも辛抱強く、マグナの言葉を強く肯定したり否定したりすることなく思考を促す会話を続けていたが、レミューリアのことを思い遣る気持ちを芽生えさせようとしたこの言葉は完全に裏目となった。 「よおし、分かった!ならレミューリアに直接聞いて来る!」 「ああっ、ちょっと!」 マグナは司の制止を振り切り開けた窓から飛び降りた。高さはそれなりにあったが、強靭な足腰はそれをものともしない。その足腰で大地を蹴れば、マグナの姿が城を囲う森の奥に消えるまでそう長い時間は掛からなかった。 「ねえ、これマズくない?」 「うーん、ヤバいかヤバくないかって言うとヤバいかな。流石に」 不平不満を抱えたマグナが、マグナを忌避しているレミューリアに突っ込むと何が起こるのかは火を見るよりも明らかである。ルシアからの問い掛けを受け、火蓋を切ってしまった責任を感じたシダは重い腰を上げてケセルに協力を仰いだ。 「全力疾走してるマグナに追い付けるか?」 「いやあ、今からは厳しいんじゃないかな。高低差はあるけどレミューリアのところまで陸続きで一直線だし、短時間の瞬発力ならマグナに分があるよ」 「それなら、衝突は避けられないものとして考えるしかないな……」
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