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「レミューリア!」
「マグナ……!?」
レミューリアは目を見開いて驚いた。目の前にいたのは、この場にあってはならぬ存在。物心付いた時からただの一度でさえ、マグナにこのダムの内部に立ち入ることを許した記憶はない。
「ばっ、アンタどうして」
「俺のこと避けてるって本当かよ!」
「はぁ……!?」
話がまるで噛み合わず、「何を今更」と言う言葉が咄嗟に口から出て来なくなるほどレミューリアは困惑していた。マグナが本来この場にいることを禁じられている理由はレミューリアの好き嫌いではないからである。
「いいから早く出て行きなさい!」
「シダとかジークとかは一緒にゲームやったことあるって言ってたぞ!どうして俺とはやらないんだよ!」
「そんなのあたしの勝手でしょ!いいから出て行って!」
「ちゃんと答えるまで帰らないぞ。俺のこと嫌いなのか?」
「あー、もう……」
マグナの興奮が高まれば取り返しの付かない事態を招きかねない。レミューリアは苛立つ気持ちを必死に堪え、マグナと話をすることにした。
「じゃあこうしましょう。そのことは外でちゃんと話すわ。だから出て行って。あたしと一緒に出るなら良いでしょ。あたしと話に来たんだから」
「まあ確かにそれは別に良いけど……そもそも、此処は何の部屋なんだ?」
発熱を伴う危険な興奮が一旦収まったことは幸いだったが、マグナはレミューリアの気も知らず呑気に居座り続けた。それどころか立ちふさがるレミューリアのを厄介者のように扱い、首を伸ばしてその後ろを覗き込みさえいた。
「え、何だこれ、すっげー!!」
そうして見付けたのは、先程の傑作を初めとする氷のオブジェクト達であった。思わず目を奪われる美しい芸術作品に、それが山ほど並べられた誰も立ち入れない秘密の部屋。鳴りを潜めた興奮が再び噴き上がるには十分過ぎる刺激であった。
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