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そこから数分遅れで、ルシアにジーク、そして司を背負ったケセルが次々と湖の畔に降り立った。
「マグナいる?いないな。もう中だ、急げ急げ!」
そう言って皆を急かすジークでさえ、氷のダムに直接着陸することはない。その理由は天端に薄く刻み込まれた白い爪痕が示している。今度はケセルがそれを指差して叫んだ。
「はいダメ―!これレミューリアがめっちゃ怒るやつ!」
「もう中でどうなってたとしても怒られるのは決まっちゃったね」
「そこまで大変な傷には見えないけど、レミューリアは気にしているの?」
苦笑いを浮かべているルシアに司が尋ねると、気にするどころではなくご法度なのだと言う答えが返って来た。それに残りの二人も深々と頷いている。
「でも、レミューリアは氷の魔法を使えるからすぐに直せるんだよね?」
「そうだね。魔法で作られた氷は凄く頑丈で、ちょっとやそっとの熱じゃ溶けないようになってるんだ。例えばだけど、この上でキャンプファイヤーしながらみんなで踊ったって大丈夫だからね。絶対に怒られると思うけど。実際は傷一つでアウトだし」
「マグナの時もそうだったけど、正直凄く神経質って感じがするね」
「まあ、マグナに関してはそれだけじゃないけどね。性格とかも関係ない。根本的な問題として、マグナは此処に来ちゃいけないことになってるんだよ」
「ま、まだ何かあるの?」
「さっきキャンプファイヤーしても大丈夫だって言ったけど、例外もある。魔法で作った氷はね、魔力を含んだ熱には弱いんだ」
加えて血の繋がった兄弟である場合、魔力の波長が近くなることでより熱が通りやすくなると言うおまけ付きであった。
「もう、何もかもがダメだね。踏んだり蹴ったりだ……」
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