雪消の候

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「ガーン!!!」 「言ってる場合じゃないぞマグナ。さっさと逃げる!」 大きな声は周囲の空気を震わせるが、その振動は音が止んで引き波のような静寂が訪れても収まることはなかった。レミューリアの激情が魔力となって周囲に放たれ、それに氷の内壁が反応しているからである。 「でも……」 「謝って済むくらいならこんなに怒らないって!何やったか知らないけど、今は諦めて!」 司は既に当事者のマグナを差し置いてレミューリアの説得に乗り出す危険人物と認定されており、口を開く前にルシアとジークの手によって速やかに退避させられている。残ったマグナもケセルが引っ張る形で最奥の部屋から連れ出された。 振動は更に強まり、通路の外壁や床から次々と氷の柱が突き出して四人の行く手を妨げた。 「ひええ!早く出ないとオイラ達もダムの一部になっちゃうよ!」 「なあケセル。もうこんだけ氷バンバン出て来るなら、バカ正直に通路を進まないで横の壁とか壊せないかな。直ぐ塞がるって」 「湖の方と反対側にすれば大丈夫だと思うけど、そう簡単に壊れるようじゃ大変だよ」 「そのための熱源だろ」 「だってさ。どう?」 「こんなつもりじゃなかったのになあ……」 ケセルは自分より早く走れる筈であるマグナの手を引きながら訪ねてみるが、返事は上の空であった。 「ダメだ。すっかり鎮火しちゃってる。氷を溶かすどころじゃないよ」 「チラッとしか見えなかったけど、お前なんか手に氷の塊みたいなの持ってたよな。それを壊したからあんなに怒ってるのか?」 「もう、そんな話は後だよ。でも後でちゃんと理由聞かせてね!」 そう言いながらも、先頭のルシアは出入口が塞がっていないことを目視で確認して安堵した。何度目になるかも分からない折り返しを抜け、暴走状態のレミューリアが引き起こす氷洞の天変地異もようやく置き去りにすることができた。
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