雪消の候

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「そんなのおかしいだろ!」 「おかしくないよ……君もその内、分かるから。ただ一緒にはしゃいで遊ぶだけが、兄弟じゃないんだって」 「じゃあ、ポールはその弟と今も仲良いのかよ!」 「良くは……ないかな。でも、昔ほど悪くない。喧嘩だってしない」 「でも昔は一緒に遊んだりしてたんだろ?」 「それは……そうだけど……」 「もし今、一緒に遊ぼうって言われたら遊ぶのか?」 「もしかしたら……遊ぶかも。今はあいつも煩くないし、子供の頃から遊び方も変わってる」 「だけど遊ぼうって言ってもらえないんだろ」 「そ、それは……」 「遊びたいのに、遊べなくなっちゃったんだろ」 「……!」 マシンガンのように連射されたマグナの言葉が、遂にポールの心臓に突き刺さった。 「一緒に遊べなくたって、仲良くなりたくなかったワケじゃないんだろ」 「当たり前じゃないか。兄弟なんだから。でもあいつは……」 ポールは両膝を抱えて、蹲った。 「昔は、一緒に外に出かけたんだ。この山の麓にある森なんて、毎日のように通ってた。名前もしらない虫を捕まえて、切り株の上で戦わせたりしてたんだ。でもあいつは、あいつは、音楽が好きになって毎日部屋で訳の分からない楽器を鳴らして大声で歌うようになった。僕は違う友達と遊ぶようになった」 弟は気兼ねなく歌える場所が欲しいからと、ポールよりも早く家を出て行った。それが両親の目には早々と独り立ちした立派な息子に写ったようで、ポールもどことなく居心地が悪くなり追い立てられるように家を出て今に至る。 「ははっ。あいつは本当に耳障りなやつだったよ。オマケに最後の最後で、僕の顔に泥を塗って出て行った。でも……遊んでたんだよな。音楽なんてやり出さなければ、僕だって……」
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