雪消の候

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(マズい。話が逸れて来ちゃったな……) 司はいがみ合う二人の間に割って入り、落ち着くように促した。 「マグナはポールさんのケースとはちょっと違うかもね。だって別の趣味を持つようになったからすれ違い始めたってわけではないから」 「そうだね。むしろ、一緒にできる遊びをまだ持ってたのに避けられたことに納得が行ってないんだから」 「なんだ……僕の時よりも、タチが悪いじゃないか……それじゃあ僕はなんのために……」 ルシアも同調して場を収めてくれたのは良かったが、意味もなく過去の恥を打ち明けたと知ったポールはより落ち込みへたり込んだ。幸い、地面と平行になったその背はフランソワに優しく撫でられたことで多少は救われた。 「とにかく、本題に戻ろう」 「本題って?」 「……」 まだ、マグナが大失態をしでかしたことしか聞かされていない。そんなヴァイスの指摘で司も初めて気が付いたが、この事態にたいしてどう収拾を付けるかがまだ決まっていなかった。 「さっき聞いた一件はマグナが謝ってレミューリアが許す、それで終わりだよ。多分茨の道だろうけど最終的にはそうなるだろうさ。だけど、そうなったところでマグナが抱えてる問題は何も解決しないよね。何だったらマグナがレミューリアのオブジェを壊したことは本題とは何にも関係ない」 レミューリアの気迫に圧倒され、それを収めることで頭が一杯になってしまっていた四人が、当事者ではないからこそできるヴァイスの客観的な分析に感嘆しながら頷いた。 「確かに、さっきのを許してもらったところでマグナの言う『一緒に遊ぶ』は無理だろうね。元々避けられてたんだから。そっちが本題だ」 レミューリアに謝り倒すだけならマグナ一人でもできる。謝って済む問題にいつまでも気取られているわけにはいかない。少しばかり畏れ多いが、人数が集まっている間に文殊の知恵を出すためにも司は先程の出来事を一旦忘れることにした。
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