雪消の候

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「マグナ、もうこれ以上まどろっこしい話はしたくないから単刀直入に聞くよ」 司は胡座をかいて座り直し、マグナに真っ直ぐ自分の方を向かせた。 「レミューリアのために、どこまでする覚悟がある?」 「ど、どう言うこと?」 「例えばその性格、気に入らないって言われたら変えられる?無口になれって言われたらそうなれる?」 「それは……分からない」 「ポールさんの言うように、気の合う、合わないはどうしてもあるよ。僕だって似たような経験をしたことがある。クラスメイトとだけどね。その時は、苦手な人とは仲良くしなければそれで良かった。でも兄弟をそれで済ませたくはない。それがマグナの望みなんだよね」 絶え間なく舌を回しながら、自らの言葉を耳で拾い直すことで司は何とかマグナに説明できる語彙で現状を説明し切ることができた。 ポールは趣味が合わなくなった弟に迎合することはなく、そのまま疎遠となってしまった。マグナがそれとは異なる道を歩みたいと望むのならば、対応もまたポールと異なったものを選ばなければならない。その覚悟があるかと、司は尋ねたのであった。 「でもさあ、俺だけ努力して色々変わらないといけないの、何かおかしいじゃんか」 「もしお互いに仲良くしたいと思ってるなら、そうだね。レミューリアの方からも何か歩み寄るべきだよ。でも……」 「そもそもレミューリアは俺と仲良くしようとは思ってない……かあ」 ポール、司と立て続けに冷や水を浴びせられ続け、意固地になって燃え上がっていたマグナにも流石に翳りが見えて来た。しかしその時、非常に重要な情報がふとジークの口からこぼれ出た。 「変わった変わらないで思い出したけどさ、レミューリアって昔はあんな感じじゃなかったよな」
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