雪消の候

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「え、そうなの?」 先ほどはレミューリアを性根を変えることは傲慢であり難しいためマグナが折れるしかないと諭したが、元々歪んでいたものを戻すことはならば話が変わって来る。 「まあ物静かな感じは一緒だったけど……でも、昔はもっとよく笑ってたしマグナのことも避けてなかった。厳しいことも殆ど言わなかったし、あと眉間にシワもなかったな……」 ジークが指折り数えて思い出す内に、他の兄弟も次第に共感して頷き始めた。 「確かに、レミューリアは厳格者じゃなくてただのしっかり者だったね。父さんも随分と褒めてたのを思い出すよ。レミューリアみたいになりなさいって、良く言われた気がする」 「今だったらむしろレミューリアにヴァイスを見習って欲しいけどなあ」 「マグナ、そう言うところ。僕はそんな話してないよ」 「はあい……」 何はともあれ、ジークの過去の記憶は確からしいと言う証言も幾つか得られた。しかしレミューリアがいつから厳格になったのか、そして最大の疑問として何故そうなったかはまるで分からなかった。 ここまでプライベートかつデリケートな議題になってしまうと、束になって紡ぎ出した文殊の知恵も役には立たない。既に出口が見えない話が大分長くなってしまっていることもあり、司はここで次の手を打って出ることにした。 「フランソワ、ちょっとお願いをしても良い?」 「え、何かしら」 「何も、かしらもないよ。決まってる。そんな頼み事受けちゃダメだ」 (・・・・・・) 柄にもなくハッキリとした声色で、ポールが司の前に立ち塞がった。 「君は彼女に、そのレミューリアって人の秘密を聞き出させようとしているんだろう」 「人聞きの悪い言い方をしないで下さいよ。その通りですけど」
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