雪消の候

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「あ、そう言えば」 フランソワが孤軍奮闘している間、司達は心ここに非ずと言った雰囲気で解散することもできず、かと言って気晴らしに打ち込むこともできない神妙な時間を過ごしていた。 小雨のように捉えどころのない会話を耳に挟みながら、ふと昔のことを振り返っていたジークがとある心当たりを掘り起こした。 「レミューリアの性格が変わったの、少なくとも家を出てからだよな」 「それは確かに言われてみればそうかもしれないけど……何か、手掛かりになりそうかって言われると漠然としているね」 「俺とルシアは学校に行き始めただけだから分からないけど、レミューリアは仕事をやり始めたワケだろ。皆も、ケセルもそうだ。それが何か関わってるんじゃないか?」 「そうかなあ。オイラは別に仕事をやって性格変わったとか、そう言うのはないと思うけどなあ」 「それはアンタが責任感じてないからでしょ」 「うわあっ!!」 突然背後からレミューリアに話し掛けれられ、ケセルは驚いて飛び上がる余り頭上にある結界を突き抜けそうになった。しかしそこはプロ意識で折り返し、急降下から着地までスムーズに行い畏まった様子で尋ねた。 「こ、こっちに来たんだ……」 「良くそんなセリフ出て来たわね。誰の差し金だか知らないけどフランまで寄越して、そんなに必死とは知らなかったわ」 「いやそれは……」 「僕だよ。僕が頼んだんだ」 司がケセルとレミューリアの間に割って入る。当のマグナは竦み上がって未だに声一つ上げられない。そんな様子を見て、レミューリアは少しだけ溜飲を下げたような声色になった。 「ふーん……まあ、良いわよ。あたしだってナゾナゾ遊びがやりたいわけじゃないもの。そんなに知りたいなら教えてあげる。マグナが気に入らない理由」 その言葉に、全員が固唾を飲んだ。
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