雪消の候

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「マグナ。あんたは自分が背負った使命を何も理解してない」 「お、俺だけ?」 レミューリアは答えを言い切ったような佇まいであったが、マグナには心当たりがない。 「使命……って、仕事のこと、だよな……?」 「そうよ。他に何があるの」 「こっちが聞きたいくらいだよ!俺は仕事で失敗なんてしてないぞ!」 「そんなの当たり前でしょ!?」 会話の流れに不釣り合いな怒号と、力強い一度の足踏み。間違いない。レミューリアは遠回しな表現や意地の悪い問答などはしておらず、先程の宣言通り本心を伝えている。 「あたし達にミスは許されないのよ」 「ああ、そう言うことか」 あとはその意味を読み解くだけである。その試みに成功したのはヴァイスであった。 「マグナ、やっぱり君はレミューリアにとって特別みたいだよ」 「だからあ、それが何でなのか教えてくれよお……」 「ミスは許されない。さっきレミューリアはそう言ったけど、ハッキリ言って僕はいくらでもミスできる。もしも仮に、土の管理に失敗してここら一面の植物が全部枯れてしまったとしても誰かを危険に晒すわけじゃない。父さんが少し困るくらいのものさ」 そう言って、ヴァイスは他の兄弟にも順番にレミューリアの発言を当て嵌めた。ヴァイスと共にゼロの農園を管理しているフランソワも、天気を調整しているケセルとヴァイスも、湖の環境を守っているラルフィも、ミスが許されないと釘を刺されるような厳命を請け負ってはいない。 「マグナ、もしレミューリアのダムが崩れたらどうなると思う」 無論ミスをしないに越したことはないが……と前置きをした上で、ヴァイスはいよいよ残り二人の仕事にスポットを当てた。
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