雪消の候

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全てをやり切った後、レミューリアはつい先ほどまで激流そのものであった氷塊の上に呆然と佇んでいた。目線の先には何事もなかったかのように氷のダムが日光を照り返して輝いている。よく見ると自分が突貫で穴を塞いだ部分は壁が厚く少し盛り上がった状態になっており、辛うじて数刻前の悪夢を思い出させてくれた。 「おーい!大丈夫か!?」 遠くからマグナの声が聞こえたことを皮切りに、ある者は土の壁をよじ登り、ある者は飛び越えながら兄弟達が氷塊の上に押し寄せた。司はヴァイスに背を貸してもらい、ダムの向こうからも大きな音を聞き付けてラルフィがやって来た。 元よりそのつもりはなかったが、これでもう隠しようがない。レミューリアの大失態は白日の下に晒された。 「ええ、お陰様で……」 しかし不思議なことに、レミューリアの心の中に負の感情は殆どなかった。暫くすれば、皆の顔が見える頃にでも耐え難い屈辱と羞恥に襲われるものと覚悟していたが、すっかり取り囲まれた後もそのようなことは起こらなかった。 皆の表情も、失望や怒りに満ちたものになっているかと思われたがそのようなことはなかった。純粋に大事に至ることなく危機を乗り越えることができた安堵を分かち合い、ただお互いの無事を喜んでいる。 何もなかった。自分が恐れていたことは、何一つ起こることはなかった。 「いやもう、ビックリしたなあ。何があったんだ?それと怪我とかしてないか?」 そしてあれだけ冷たく突き放したマグナが先陣を切ってく自分の心配をしてくれているともなれば、もう毒気を心身に持て余していることなどできなかった。 「怪我はしてないから大丈夫よ。全部……全部、話すわ。あたしの恥ずかしい過ちを」
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