雪消の候

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宣言通りレミューリアは自身の失態について洗い浚い打ち明けた。覚悟をした以上、言葉に詰まることはなく最後まで吐き出すことはできたが、その後の何とも言えない沈黙には不安を隠せなかった。 嘲るなり、𠮟咤するなりしてくれれば反応のしようもある。そこまで欲を言わずとも誰かが口を開いてくれるだけでも良かったが、遅れて到着したラルフィの存在がそれを押し留めた。 「うん。大丈夫そう!」 レミューリアが凍らせたものを中心に、今回ダムから流出した水の中に魚が巻き込まれていないかの入念なチェックがラルフィによって行われ、その合格を以ってようやく参事を未然に防いだと言う称号を皆が手にした。しかしそれは幸運によるものではない。魚影で作業するレミューリアの気が散らぬよう、ラルフィが予め胡内に緩やかな水流を作りダム壁の周囲に魚が近寄らないようにしていたおかげであった。 「何から何までみんなに助けられたわ。本当に、自分が情けない……」 「くよくよするなって。仕事のミスなんて誰でもやったことあるよ。なあ!」 マグナが呼び掛けると、特にケセルが苦笑いしながら頷いた。 「さっきも言ったでしょ。あたしの仕事は規模が大きくて、周囲に与える影響も桁違いなのよ。だからミスなんて絶対にしちゃいけなかった。やりたいことも我慢して、みんなの誘いも沢山断って、こんなことだけは絶対やらないようにずっと気を付けてたのに……なのに、こんな身勝手な理由で……もう、みんなに合わせる顔なんてない」 「確かにそれはさっき言ってたな。そんで、その時からずっと訊こうと思ってたんだけどさ。なんで『絶対に』ミスしちゃいけないんだ?」 「何度も同じことを言わせないで。あたしがミスをしたら大変なことに……!」 「なってないじゃんか」 「え……?」
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