雪消の候

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「レミューリアが俺のことを気に入らなかった理由は、俺の性格が責任の重い仕事を任されてるとは思えないものだからなんだろ?」 「……ええ。そうよ」 そんな使命に見合わない軽い気持ちで仕事をしていれば、いつか重大なミスを犯す。そんな啓蒙も込めた言葉のつもりであったが、マグナよりも先に自分がミスをしてしまった。 その惨めな気持ちは筆舌に尽くし難いものだが、かと言ってなかったことにすることはできない。これから嫌味を言うとは思えないマグナの表情を信じてレミューリアはおずおずと相槌を打った。 「あの時も言ったけど、俺だって自分なりに真剣に仕事はやってるさ。でもそれをレミューリアが信じてくれなかったのは、真剣にやってたらそんな明るい性格でやっていられる筈がない。そう思ったんだろ?」 「そうよ。いくら任された分をきちんとやっていたからって、万が一を考えたらそんな気軽に遊んだり出歩いたりできる筈がないもの」 「レミューリアがそうだったみたいにか?」 「ええ」 先走ってすれ違いがないよう、マグナは何度も確認を求め、レミューリアもその度に頷いた。 「そこだったんだな。一番伝えないといけなかったのは。やっと分かったよ。俺が気負い過ぎなくて済んでるのは、真剣に仕事をやってないからじゃないんだ。頼りにしてるんだよ、皆を。何かあったら助けてくれるだろうって。さっきみたいにさ!」 もし地下に蓄えている熱エネルギーが暴走してしまった時は、ケセルが噴出の早期発見やその周辺にいる住民の避難の指示を行う。マグマが流出していれば、ヴァイスが道を作り被害を最小限に抑える。またケセルとヴァイスの機動力でラルフィをサポートすれば、マグマを早期に冷やし固めることも可能である。 そして何よりレミューリアが舌を巻いたのは、その有事における協力体制がケセルとヴァイスには共有済みと言う点であった。
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