デボラ・フランソワ

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「フランソワ。もう少し蝶を良く見ておいた方が良いんじゃないかな」 グラス・アイランドを抜けてから街へ降りるまでの間にある山道で、後ろに付いているヴァイスが心配になって提言した。 フランソワは蝶を先導しているポジションにいるため、当然ながら前を歩いている。時折戯れるように後ろを振り向いたりクルクルとスケーターのように回ることはあるが、基本的に蝶は自由に飛んでいる状態であった。 「あら、大丈夫よ。皆ちゃんと付いて来ているもの」 本人が自信を持って言うのは伊達ではなく、フランソワは蝶が何匹いるかは勿論、個々の特徴などについても完全に把握している。 「農園にいた時、何匹か迷子になり掛けていたんだ」 ヴァイスはそれを分かっているからこそ、釈迦に説法はするまいと大人しくしていたが、先程司と共にバブルの中に入るのを何度か阻止する内に心配の方が勝ったのであった。 「グループから離れてはダメ。危ない場所に行ったり触れたりしてはダメ。ちゃんと皆には言い聞かせてあるわ。少しふらふらと色んな場所を見渡してただけよ」 「……フランソワがそう言うなら、任せるよ」 司からすれば、ヴァイスの言う通り危うい場面があったようにも見えたが、フランソワの言うように少し動き回ったところを大袈裟に取り上げ過ぎていたような気もした。 板挟みの状態はまだまだ続きそうだと、最後尾から人知れず憂うような溜息を吐いた。
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